遂には裁判に…

 遂に訴える人が出ましたか、『千と千尋の神隠し』ビデオ。この行為そのものは、私としては非常に歓迎していますが、ちょっとやり方に疑問点もあります。記事を元に検証したいと思います。まずは、毎日新聞12月3日の記事を。(以下の引用文のすべての赤字は、引用者によるものです)
 大ヒットしたアニメ映画「千と千尋の神隠し」(宮崎駿監督)を収録したDVD(デジタル多用途ディスク)の購入者が販売元のウォルト・ディズニー・ジャパン(東京都目黒区)を相手取り、「色調が赤みがかって映画館と全く違う」などとして、正しい色調のDVDとの交換と1人1万円の慰謝料を求める訴訟を京都地裁に起こした。

 自らもDVDを購入し、原告にもなった大谷哲生弁護士は「素晴らしい映画なのにDVDにがっかりした消費者は何十万人もいるはず。法廷で真相を明らかにするのが目的だ」と話している。

 まず、裁判の目的は全く問題が無いです。正しい色調のDVDが欲しいのは、私を含む多くの購入者の希望ですし、慰謝料の金額だって、売れた本数から考えて、敗訴した時のブエナビスタの被害は、それこそ大変な物になるでしょうが、原告側の要求としては常識の範囲内と思います。是非とも、真相を明らかにする為、頑張って欲しいと思います。

 さてこの裁判、勝算はあるのでしょうか。次は、同じく毎日新聞の7月6日12月3日の記事を。
 ただ、法律上、常に苦情が認められるわけではない。製造物責任法を根拠に返品を求めた場合、再生時にプレーヤーが壊れたり、ユーザーが何らかの傷を負うなど目に見えた「損害」が必要となるという

 提出されたヒストグラムによると、予告編の場面画像では赤、緑、青のそれぞれのRGB値が0〜255に満遍なく分布し、各色が平均していた。それに対し本編の同じ場面の画像では、赤だけは同じだが、緑が0〜180、青が0〜150に圧縮されたような分布で弱まっていた。
 以上2つの記事から推測するに、まずは現行の製造責任法では厳しい事が分ります。ソフトウェアの製造責任で、「目に見えた損害」が必要な現行法は、法的に不備だとは思いますが、現状がそうなのですから、取り敢えずは仕方がありません。では、勝訴は無理なのでしょうか。

 実はそうでも無いだろうと、私は考えております。以前のコラムを書いていた頃、とある方からメールを頂きまして、その方も同様の調査を行っていて、それをまとめたホームページを見せていただきました。その方は、全てのシーンで調査を行っていたわけではない断っていましたが、この記事通り、緑と青が極端に少ない調査結果を出されていました。このホームページの下の方にあるグラフを見て下さい。青と緑の上の部分が、バッサリ切れているのが判ります。

 重要な点は、この色の足りなさを示すグラフが、専門家が見ればおかしい判るというレベルではなく、素人目にすら露骨におかしいという事です。裁判所の解釈は、そう単純には決まらないので、裁判での戦い方次第なのでしょうけれど、一般常識から言えば、明らかに不良品、と断定できるだけのグラフになっています。これだけ科学的な証拠を持って裁判に挑むのなら、難しいけど勝算あり、といったところではないかと思います。

 さて、この裁判で私が一番疑問を感じたところですが、それは訴える相手です。同じく毎日新聞、12月3日の記事から。
 −−制作元のスタジオジブリを被告にしなかったのはなぜでしょう。

 大谷氏 ブエナとジブリの関係について、私たち購入者は分かりませんので、販売元を相手取りました。ただ、裁判の過程で今後、ブエナが「ジブリの言う通りのものを販売した」と主張してくるかもしれませんが。制作者としてどのようにお考えなのか、宮崎駿監督にも(法廷で)話を聞いてみたいと思います。
 この問題に関してのブエナビスタの公式見解は、ジブリの色彩設定と撮影監督が認めた色調である、という事です。つまりは「ジブリの言う通りのものを販売した」と、既に主張しているのです。であれば、DVDの色調を決めたスタッフに、まず責任があり、ブエナビスタの責任は、それを鵜呑みに発売してしまった事でしょう。つまり、ブエナの主張通りであれば、この問題の最大の責任者は、『千と千尋の神隠し』色彩設計、保田道世氏と、撮影監督、奥井敦氏という事になり、ブエナビスタはその後です。

 この裁判では、企業姿勢を問題としていますから、個人は訴えたくないというのは理解出来ます。しかし、保田道世氏、奥井敦氏の両氏を直接訴えないにしても、スタジオジブリを訴えていないのは、片手落ちなのでは無いでしょうか。

 そして、宮崎監督に話しを聞きたいと言ってますが、恐らくビデオ嫌いの宮崎駿はビデオ化に関わっていないでしょう。であれば、彼の責任はあくまで、映画監督として映画を作る事だけです。ビデオ化に関わっていないのであれば、そのビデオがどんな出来になったとしても、彼には全く責任がありません。ですから、宮崎駿が法廷に出てくる事は、まず無いかと思われます。私は、宮崎駿が時々示す、このような観客に対する不誠実な態度は、はっきり言って大嫌いです。しかし、責任が全く無い以上、発言を期待するのは、正直無駄だと思います。

 批判的な事も書きましたが、この裁判の行方には非常に注目しています。私もそれなりに色々分析しましたが、結局のところ何でこんな事が起きてしまったかは、さっぱり分りません。少しでも真相究明につながればと、期待しています。

 TV放映の日程も来年1月24日に決まったみたいでして、この話題はしばらくは終わりそうも無いですね。機会があるたびにコラムを掲載していきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。


 追伸。

 上記のヒストグラムのページを作った方は、外国に住んでおられる方なのですが、その方によると、もうすぐフランスで『千と千尋の神隠し』が発売されるそうです。フランスのディズニーから、日本のDVDの色と音はフランス人には合わないので変更するというアナウンスが、以前あったと報告して頂きました。

 詳しくは言いません。ただひとつ、私は激怒しています。でも魅力的だなぁ、買いたいなぁ。ヨーロッパならリージョン2ですから、日本での再生もOKですしね。買ったらまたレポートします。