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『ギブリーズ』観てきました〜

 巷では、『猫の恩返し』よりも面白かったという意見もある『ギブリーズ』。まぁ、30分の小品を長編と比べるのはナンセンスだとは思いますが、そういう意見も、納得出来る内容だったと思います。私も面白かったと思いました。実験的な内容で新しい、という側面もありますが、それとは別に短編映画として純粋に面白かったと思います。

 まずは初っ端のカレーに大爆笑。いや、マジに笑えましたよ。基本的には激辛カレーを食べるだけだし、ギャグのネタそのものも、非常に当たり前のネタ。先が読める展開と言えばそうなのですが、その見せ方が徹底しているので、分かっていても笑えます。野中くんが、となりの居眠りする女性の為、終電で終着駅まで着いてしまうエピソードも、ほのぼのして良いですね。映像も、窓ガラスの描写がキレイでした。初恋の話しは、一番長さがありメインのエピソードなのでしょうが、これも映像、内容、共に満足出来ました。

 後、男性観客から言わしてもらうと、主人公の野中君が非常に親近感のわくキャラクターだったのが良いです。『猫の恩返し』の内容に、そういう要素が全くと言って良いほど無かったので、特にそう感じました。

 ところで、この作品の監督は百瀬義行ですが、この人は『火垂るの墓』では作画監督補佐を担当しています。それだけではなく、イメージボードも作画監督の近藤喜文に負けないくらい沢山書いていますので、ただ作画監督の手伝いをしたというだけではなく、映像のイメージ作りにも多大な貢献をした人だと思います。『おもひでぽろぽろ』では、場面設計と絵コンテ。『平成狸合戦ぽんぽこ』では、画面構成と、ただのアニメーターとしてだけでなく、映像作りそのものに深く関わっていると言えます。

 『となりの山田くん』になると、演出まで行ってます。『となりの山田くん』は、大きく分けて2つのパートに分かれていまして、冒頭の、いかにも3DCGしている『ボブスレー編』と原作パートの『マンガ編』に分かれていますが、百瀬義行は『ボブスレー編』の演出を担当しています。(『マンガ編』の演出は田辺修)

 それに比べて、宮崎監督作品ではほとんどが原画作業でして、あくまで1アニメータとしての仕事しか行っていません。その事から考えると、高畑監督にとって彼は、作品内容に深く関わらせるに足る、信頼厚い最重要スタッフと言えるでしょう。あまり単純に物事を考えるのは、問題がある行為かもしれませんが、スタジオジブリ内に、高畑組と呼べるような組織があるとするならば、百瀬義行はその高畑組に属してるスタッフだと思うわけです。

 高畑監督の信頼厚いアニメーターというと、真っ先に近藤喜文の名前が浮かんできますが、スタジオジブリが発行した『近藤喜文の仕事』という本を見る限りでは、元々はもっとマンガっぽい絵を好んでいた事が判ります。しかし、高畑監督に別の才能を見出され、『赤毛のアン』『火垂るの墓』のようなリアルな表現もするようになります。ここら辺が凄く面白いところで、ちょっと高畑マンセー解釈で、不愉快に感じるファンもいらっしゃるかもしれませんが、彼は高畑監督との仕事があったからこそ、世界中で誰にも真似の出来ない、近藤喜文だけの個性を、得る事が出来たのだと私は考えています。百瀬義行も高畑監督との『となりの山田くん』の仕事で、個性的な映像表現を身に付けたと、言えるのでは無いでしょうか。

 『ギブリーズ』を観て思うのは、本当に素直に『となりの山田くん』の進化系という印象を受けるという事です。映像的には一目瞭然ですし、内容的にも、普通の人の日常を丁寧に描くという、高畑監督がずっと取り組んできたテーマです。カレーのエピソードも、ごく普通のネタを徹底的に見せる事によって笑いに転嫁する、高畑流のお笑いとも言えますし、初恋のエピソードも、やや乱暴ですが、『となりの山田くん』の技術で『おもひでぽろぽろ』をやったと言えるでしょう。

 勿論、高畑監督の作家性、客観的で冷静な視点、それがあまりに行き過ぎて、『火垂るの墓』や『母をたずねて三千里』のように、冷酷とも言えるレベルな物は、『ギブリーズ』にはありません。それはやはり、この作品の監督はあくまでも百瀬義行であり、高畑勲ではないのですから当然でしょう。しかし、やはり『ギブリーズ』を観て私が思う事は、高畑監督の正当な後継者と言える集団は、ジブリ内でしっかり育ってきているという事です。また、そう考える時に、高畑勲教の熱心な1信者である私として、大きな喜びと安堵を感じ、このチームの今後の発展に大きく期待してしまうのです。

 『となりの山田くん』の興行的な失敗の最大の原因は、あの絵柄にあったと思います。映画を作っている側からすれば、ブランドに関わらず作品そのものを観て欲しいという欲求はあるのでしょうが、やはり現実問題、ジブリ映画を観に来る観客は、ジブリブランドの信頼性によって足を運ぶ側面はどうしてもあるでしょう。ですから、いくらジブリ作品と銘打ってあったとしても、いしいひさいちその物のあの絵柄と、世界初と謳っていた水彩画風アニメーションが、観客の心の中でジブリブランドと結びつかなかったのだと思います。ですから、今後も同時上映という形で構いませんから、『ギブリーズ』を作りつづけてくれれば、観客の信頼を勝ち取り、『ジブリ=ギブリーズ』という式を観客の頭にインプットする事も、不可能では無いでしょう。勿論、観客を満足させなければいけませんが。

 まぁ、私の夢の話しはさておき、『ギブリーズ』の続編作成は決定事項みたいなので、非常に楽しみです。短編なので、ビデオの発売がどういう形になるのか、さっぱり予想がつきませんが、発売されたら是非とも購入したいと思います。ただ、『ギブリーズ』の続編も楽しみですが、短編ではない、長編とまではいかなくても、中編と呼べるくらいの映画を、このスタイルで作って欲しいと思います。1時間くらいの映画でも、名作と言える作品は作れます。『セロ弾きのゴーシュ』の上映時間が63分だという事を考えれば、説得力があると思いませんか。

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