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自由人、高畑勲

 日本最大の掲示板、2ちゃんねる。私の普段のコラムを読んでいただければ判ると思いますが、私はここに良く出入りしています。その中に高畑監督のスレッド『高畑勲は天才?凡才?』があったのですが、しばらく閲覧できなくなってました。しかし、最近ようやく閲覧できるようになりましたので、それを元にコラムを書きたいと思います。

 色々興味深い書きこみがあったのですが、1つ私が非常に惹かれたレスがありました。
102 名前: メロン名無しさん 投稿日: 02/04/18 03:23 ID:???

エヴァに夢中だったそうだね。ビデオまで揃えちゃって。
宮崎と押井にも勧めて、けむたがられたとか。
当時のエヴァヲタと大差無いなあ。
どこかのページにソースがあった筈なのだが見つからない
 高畑監督がエヴァンゲリオン?この、全く接点が無さそうな2つに驚きました。そして、更にこういうレスも。
107 名前: 102 投稿日: 02/04/18 16:27 ID:???

2年前位に元ジブリという人のページで見たんだよ。>ソース
今検索しても全然出てこないから消されたのかな?
でも一応、ジブリ日誌の97.7.24と97.9.4にそれらしい記述が。
因みに宮崎押井は5分と見なかったそうな。
 早速、スタジオジブリのホームページの、ジブリ日誌を参照しました。97年7月分97年9月分を引用したいと思います(以下の引用の赤字は、全て引用者が付けました)。
97.7.24(木)
 4℃の田中さんと松見さんが来社。
 ツール・ド・信州のユニフォームがついに完成。宮崎監督が早速社内をまわって見せびらかしている。
 明日屋上で、今月で退社する某氏の送別会を兼ねた、北海道人の心のふるさとジンギスカンパーティを開催する予定だが、台風が接近しているというニュースが…。
 今日からエヴァンゲリオンの一挙再放送が始まるが、高畑監督が「見なくては」と意欲を見せている。

97.9.5(金)
 ジブリでも何度か、社内パーティ等でスパゲティを注文していた東小金井南口のイタリア惣菜屋グラツィエが7月末で店を閉めてしまったのだが(評判はとてもよかった)、その後そこにできた○湾料理屋がかなりきているらしい。
 制作業務部・望月氏と高畑監督の三人で、エヴァンゲリオンを題材に怪しげな議論がなされる。因みに、高畑監督も、先日の一挙再放送でほとんどの話数を見ている。
 私が引っ越した後の遺跡から、インターネット担当・石光さんの入社試験の作文が発掘される。読もうと思ったら血相を変えた石光さんに強奪されてしまった。彼女の隣に座っている柳沢さんから白い眼で見られる(眼の奥では「セクハラ野郎」と言っていた気がする…)
 2ちゃんねるの情報は、当然のようにかなりいい加減な物が沢山ありますが、有益な情報も決して少なくありません。ジブリ日誌から読み取れるのは、高畑監督がエヴァンゲリオンの再放送を観るのにに意欲を見せているのが、回りに判ってしまうくらいに、燃えていた事です。私は、当然の事ながらこういうホームページを運営しているのですから、高畑作品が大好きです。しかし、決してそれだけが好きなわけではなく、他にも好きな作品や作家がいます。当然、回りの友人が、私が高畑ファンである事を知っていますが、物によっては気付かれて無い物もあります。好きだという事が外から見て判ってしまうという事は、かなり好きでないとあり得ないのではないでしょうか。

 更には、エヴァンゲリオン議論を同僚とやっていたのも、興味深いです。議論好きの高畑監督ですが、作品論を語るという事は、これまたかなり好きでなければやらない行為です。7月の時点で意欲を見せている以上、この時点では高畑監督はエヴァンゲリオンを観ていると考えるのが普通です。その後、一挙再放送があり、そのほとんどを観たというのですから、普通に考えれば、かなりのエヴァ好きと思われます。

 また2ちゃんねるの引用に戻りますが、
104 名前: メロン名無しさん 投稿日: 02/04/18 06:44 ID:IvxMZCOg

>>102
良い意味で行動が若いじゃん
というのがありますが、同感ですね。それにしても、自身の感性に対する自身の行動の自由さに、驚きます。ようはこの人、良いと思ったら素直に良いと思える人なのです。私の友人のエヴァンゲリオンファンも、これを読んで驚いていて、『つまりは面白ければ『セーラームーン』だろうが何だろうが観るって事でしょ、尋常な若さじゃない』と言っていました。

 『そんなの当然ジャン』と言われる方も多いかもしれませんが、当人はそのつもりでも、なかなかその通りに行動できる人は少ないです。どうしても、今まで築き上げた価値感に引きずられて、自分が感じる通りに行動出来ない、自分にとって都合の良い物を、自分の感性だと思い込む、そういう事は容易に起こり得ます。当然、歳を取れば取るほどそうなります。凄いのは、高畑監督はこの当時、既に還暦を過ぎている事なんです。

 そんな高畑監督の行動で思い出すのは、昔頂いたお葉書です。私は2年間ほどで20通ほどのファンレターを高畑監督に送っていましたが、1回お返事を頂いた以外に、もう1つ返事ではない物を頂きました。その内容に、当時の私は狂喜乱舞したのは当然ですが、内容にも驚愕しました。プライベートで頂いた手紙なので、公開するのは問題あるとは思いましたが、既に10年以上経っている事と、内容にそれほど問題が無いと思われますので、思いきって公開したいと思います。ただ、抗議等が来たら削除したいと思いますので、御了承願います。
 前略。いつもお便りありがとう。御返事しないけど、来るたびに読ませてもらっています。今日はひとつお願いがあるのですが、聞いてもらえますか。
 「火垂るの墓」をみてくれましたか。もしみていたら、その感想を書いてください。いつものような書き方でも、まったく別のようでもかまいません。ただ率直にねがいます。感心しなかったらしなかったとちゃんと書いて下さい。そして、あなたの年令や、現在何をされているのか、学校なら学年なども教えて下さい。あの映画がどのようにうけとめられたかを真剣に知りたいのです。知りあいの人の意見なども書いてもらえればありがたいです。それではお元気で。
88.8.25
 『火垂るの墓』が公開されたのは1988年4月16日でして、公開終了してしばらくしてから、この葉書が届きました。ファンレターに返事を書く人は、決して少なくはありません。『いつも応援ありがとう』とか『感想ありがとう』という、ファンレターの返事としていくらでもあるでしょう。そして、こういうファンレターの返事というのは、大抵の場合は、色々あるファンサービスの1つです。

 しかしこれは違います。作り手自らによる、アンケート要望葉書で、ファンサービスではありません。私の年齢ややっている事、知り合いの評価などについての質問もあり、高畑監督が知りたいと思っている事が、簡潔に書いてあるだけです。きっと、出来るだけ詳細な情報が欲しかったのでしょう。恐らく、あれだけファンレターを書く人であれば、感想を書くだろうと、高畑監督は考えられたのだと思います。

 こういうお葉書を頂けた事は、ファン冥利に尽き、当然非常に嬉しかったのですが、それ以上に作品の受け止められ方を知りたいが為に、こういう事をする高畑監督の感性、その自由な感性に、大きく感銘を受けました。ちょっと他の人では考えられないのでは無いでしょうか。エヴァンゲリオンの件もそうですが、自由人、高畑勲にただ驚愕するだけです。

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