| 連日、DVD問題のコラムを書いて疲れました。しかしそんな事をしている間にも、連載コラムの〆切はやってくる。好きでやっている事とは言え、結構しんどい物ですなぁ…(汗)と、愚痴はこれくらいにししょう。今回の話しは、レオナルドコック長との辛い別れの話しです。 当コラムで頻繁に書いていますが、高畑アニメにはストーリー性が希薄な物が少なく有りません。三千里でもその傾向がある回は多い事は既に紹介して来ました。TVシリーズで最もその傾向があったのは『赤毛のアン』でしょう。劇場作品では『おもひでぽろぽろ』ですね。公開前に高畑監督が、『こんなストーリーの無い映画を観てくれるだろうか』と心配していた記事を読んで、思わず笑ってしまった事があります。ちゃんと自覚しているところが面白かったですね。 さて、そんな高畑作品を語る当コラムですが、今回は逆の評価をしてみたいと思います。この回のストーリーは、やきもきさせるテクニックが、非常に上手いと思います。これについて書くと、恐らく脚本の深沢一夫の功績が大きいでしょうから、『高畑勲ネット』に相応しいと言えないコラムになってしまうかもしれません。でもまぁ、散々『千と千尋の神隠し』のDVD問題を取り上げ、まるで『宮崎駿ネット』みたいなコラムを書いていますから、まぁ気にしない事にしましょう(笑)。ところで今調べたところ、miyazak-hayao.netはまだ空いているみたいです。宮崎ファンの方は、チャンスですよ(笑)。 この回は、本来リオで乗り換える筈だった、アルゼンチン行きの船が座礁で修理中だった為、他の船を探しトラブルがありながらも、アルゼンチンへの船に、マルコが乗り換える話しです。レオナルドとの悲しい別れも済み、ロッキーと一緒に乗り換える船に向かうマルコですが、事務長に船が修理中で1週間は出航出来ない事を教えられます。レオナルドとロッキーが、船を探しに行きますが、ここで観客は、マルコの乗る船がどうなるのかに、意識が集中します。そして、めでたくレオナルドがアルゼンチン行きの移民船を見つけますが、これが出航まで後僅か。さぁ急げっ、となった時にアメデオがいない事に気づきます。 観客のスリルは、こっちのアメデオのエピソードが本物です。この2段階構成が、実に上手いと思いますね。しかも、本物であるアメデオのエピソードの隠し方も、見事な物です。船を探すエピソードの間、マルコの近くにアメデオがいない事に、なかなか気づく物ではありませんからね。フォルゴーレ号内をくまなく探すマルコ達ですが、アメデオは見つかりません。遂にレオナルドはマルコに、アメデオを責任持ってイタリアに連れて帰る事を約束し、船に乗る事を決心する様促しますが、マルコは聞き入れる事が出来ません。ここでのマルコの表情が良いですね(図1)。マルコがアメデオを見捨てられない気持ちが、非常に良く伝わってきます。アメデオは今回のように、今後もマルコの足を引っ張る事もしばしばありますが、変わりにアメデオのおかげでマルコが救われる事も少なくありません。単なるドラマを盛り上げる為だけに存在する、トラブルメーカーとは、一線を画してますね。 レオナルドはロッキーに、出来るだけ船を止めるよう、桟橋に向かわせますが、ここでコックのチェザレーと遊ぶアメデオが発見されます。ここもまた上手い。探し物がどこを探しても見つからず、思いもかけないところで偶然見つかるという、探し物特有の雰囲気を、実に見事に組み立てていると言えるでしょう。更には、とっとと桟橋に向かっていれば、見つかっていた、という作りもまた見事です。アメデオが見つかった時のマルコの怒りもまた良く、心配しているから怒る、感じが良く出ていて、マルコのアメデオに対する気持ちを、畳みかけています。 チェザレーと遊んでいるというのもまた上手いです(図2)。チェザレーは冒頭のシーンで、マルコを失う悲しみの為、癇癪を起こしまくっているレオナルドに、厨房から追い出されています。チェザレーが厨房から離れている理由が、きちんと説明されているのです。そして、レオナルドの癇癪は、マルコとの別れの悲しさを演出していますから、シナリオが非常に自然に構成されているのが判ります。よく、ミステリーの反則技として、謎解きの時今まで現れていなかったキャラクターが登場するものがありますが、チェザレーを冒頭に登場させているこの作りは、非常に巧みな物と言えるでしょう。非常に観客にスリル感を味あわせる、優れたストーリー構成と言えるでしょう。ただ、シナリオの上手さもありますが、その内容をしっかり画面で表現できている事も、十分素晴らしいんですけどね。 さて、ストーリ展開も良いですが、やはり三千里コラムらしく、人物描写についても書きたいと思います。やはり焦点は、マルコ可愛さのあまり、別れが辛すぎるレオナルドコック長ですね。冒頭のチェザレーへの八つ当たりとか、マルコに『首だーっ!』と怒鳴り散らすところとか、レオナルドらしい寂しさ辛さの表現で良いですね。特に良いのは、『口が裂けても言えん!』と言いながら、本音をぶちまけまくるレオナルドです(図3)。『おいおい、言ってるじゃねぇかよ!(笑)』と、誰でも突っ込みを入れたくなるところなんか、凄く良いですね。『最後だから』を連発するマルコに、いきなり切れるところなんかも、レオナルドらしさ爆発、と言えるでしょう。 正しく、爆発と言える行動を取っていたレオナルドですから、マルコが別れを告げる時の静かさが、また緩急がついていて、胸を打ちます。もっとも、トラブル発生で、大騒ぎの中でのお別れになってしまうんですけどね。ただ、しんみりしたお別れではなく、最後の最後までマルコの為あれこれ出来たこの別れ方が、恐らくレオナルドにとっても、良いお別れであったであろう事が、観客にしっかり伝わってくるところなんかは、さすが三千里と唸らせられるところでもあります。ところで、これほどの存在感を持ったレオナルドというキャラですが、こうしてコラムで追っていきますと、結構登場話数が短い事に、改めて驚きます。現在は、コラム執筆の為に観なおしていますが、もう少し登場話数が多かった印象がありました。今後も旅の途中で、沢山の人物に会っていきますが、今後もレオナルドに勝るとも劣らない、魅力的なキャラクターのオンパレードなんですよね〜良くもまぁ、次から次へと登場する物だと、驚くしか有りませんね。 ところで、今回の主役はレオナルドコック長といえるのですが、出番の少ない一人のキャラクターが、その少ない出番で存分にらしさを発揮しています。事務長です。ロッキーに、マルコが乗る予定の船が出航出来ないと告げた時の彼の冷たさは、彼のキャラクターを良く表現していましたね。特に、自分の仕事には落ち度が無い事を、嫌味ったらしく言うところなんか、もう本当にらしい。事務長の出番は本当に少ないのですが、この出番の少ないキャラクターの設計がしっかりされていて、それもまたキッチリ表現されているところが、何度も言いますが、三千里と作品の凄さと言えるでしょう。 余談ですが、今回の舞台は、リオデジャネイロの港ですが、スタッフはイタリアとアルゼンチンには取材に行ってますが、ブラジルには行っていません。取材の時点では、まさかこういう話しになるとは思わなかったのでしょう。ですから、この回では、ブラジルの港をどう描くか、苦労したとインタビューにありました。それを意識してみると、確かに背景の描写とかが少なく、船内の描写を多くして何とかしようとしているのが伺えて、なかなか興味深いです。さて、今回最大の名シーンは、ひっしと抱き合いお別れをする、マルコとレオナルドも捨て難いのですが、それよりもマルコから預かったカバンに、食料を詰め込みまくるレオナルドを、挙げたいと思います。食料を詰めるレオナルドの全ての動作に、最後の最後まで、マルコの為を思うレオナルドの心が表現されていて、名演技と言えるでしょう。コック長権限、使いまくりであります(笑)。食料でパンパンに膨れ上がったマルコのカバンに(図4)、レオナルドのマルコへの愛情を感じ取った三千里ファンも、決して少なく無いと思います。そしてこの食料が、この後の回のドラマに引き継がれるのもナイスですね。 |
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