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第34話『ジェノバに帰りたい』

図1、港 マルコ達が滞在するバイアブランカは、冒頭の映像から判る通り(図1)、海沿いの街です。ブエノスアイレスから、パンパを通り、途中山越えもある事から考えると、ちょっと以外にも思えますが、そこら辺は日本人の常識でして、日本のように内陸に入れば山だらけの国であれば、街道といえば沿岸となりますが、ひたすら平原が続くアルゼンチンでは、海沿いを回り道するよりは、直線で移動する方が、移動が楽です。こういうちょっとした発見があるのも、考証がしっかりしている高畑作品ならではですね。

 さて、今回の見所は2点。1つは、イタリア貧民街サンパブロ地区の顔役、ドメニコ・ノーチェの嫌らしさ。こやつの嫌らしさは、この後の話しで更にクローズアップされるのですが、今回はその片鱗を見せてくれます。もう1つは、意固地でかわいげのないマルコです。高畑監督自身が、マルコにはかわいげがない事を、インタビューで発言していますが、第12話『ひこう船のとぶ日』に共通するかわいげの無さを見せてくれます。

 まずは、ドメニコ・ノーチェ。彼の住む貧民街の描写が見事でして(図2)、これぞ三千里といった魅力があります。家畜の鳴き声なんかも、雰囲気を盛り上げてくれますね。マルコがノーチェの家を聞く、遊んでいる子供も良い味わいです。

図2、イタリア人貧民街 さて、ノーチェ本人の悪の魅力ですが(笑)、子供であるマルコに対する、ぞんざいな態度や、平然と、まるで息でもするように嘘をついたりするところや、嘘をついたのを悪びれもせずに、自分に美味しい話しだと思うと、手のひらを返したように態度を変えるところなども非常に感じが出ていて、さすがと思わされますが、一番良いのは、キャラクターデザインですね(図4)。帽子、髭、蝶ネクタイ、いかがわしさが溢れる、非常に良いデザインです。声も良い。

 次は、マルコのかわいげの無さです。母親を捜す手がかりが、全くない状態なので、若干心神喪失状態気味の所為もありますが、ここでのマルコは非常に意固地です。しかも、せっかく親切にしてくれるフィオリーナに対し、八つ当たり気味でもありまして、非常に男らしくないですなぁ…第12話でもそうでしたけど。しかし、そんなに冷たくされても、マルコを気遣うフィオリーナの姿には、我々アニオタから見て、非常に嬉しい物があるのも、また事実(笑)。

 しかし、いくらマルコの性格とは言え、このモレッティの提供した話しに乗らないマルコは、実に納得いきませんね。その話しは全てにおいて魅力があり、むしろ彼の話に乗る事が、苦労なく母親と会える最良の道と思えます。手がかりが無くて自暴自棄になっているマルコに、街一番の有力者が尽力してくれるんですよ。大人に頼らないのがマルコだ、という反論も聞こえてきますが、昨日の晩泣きながら母親を捜すのを懇願したのですから、説得力はありません(笑)。

 しかも、モレッティには、政治家として劇場建設を通しての、イタリア人同胞を励ましたいという政治的目的があり、それに対しマルコに協力を要請しているのですから、一方的に世話になるのではなく、ギブアンドテイクの関係であるはずです。それを、見せ物扱いされるくらいで、あんなに怒っていてはいけません。

 もし、マルコがモレッティの提案を受け入れたと仮定して、この先の展開を想像してみましょう。ドメニコが言う通り、アンナはバイアブランカにはいません。しかし、フランチェスコ・メレリはいるのです。確かに、偽名を使い潜伏していますが、マルコがイタリアから、母親に会う為に自分を捜している事は、きっと耳にはいるでしょう。勿論、メレリがどういう状態で潜伏しているかは、モレッティの推測通りだったのですから、メレリを釣り上げるには、どういう餌が必要かは、非常に簡単に思いつくはずです。まぁ、借金や仕事の問題で、少々力を貸して上げれば良いだけです。

図3、いかにもいかがわしい、ドメニコ・ノーチェ また、有力者に恩を売りたい、ドメニコもいますから、スペイン人を自称しながらイタリア人とばかり交流を持ちたがる、変な男のに気付く可能性も高いです。つまりは、メレリを釣り上げるのは、時間の問題だという事です。

 更にその後の展開を考えると、アンナの行き先は、メレリが知っていますから、モレッティは手紙を出す事が出来ます。この作品では、イタリア人同士の同胞意識に、マルコが大いに助けられる話しがありますが、貧乏人同士のコミュニティーにも、それなりに大きな力があるのですから、有力者同士であれば、もっと大きな力があるはずです。これはイタリア人同士付き合いではありませんが、モレッティは大牧場主バルボーサと付き合いがある事を、告げています。

 この後登場する、ブエノスアイレスのイタリア系有力者、ファドバーニとも、知らない関係とは思えないでしょう。ファドバーニも、マルコの為に紹介状を書いて上げますし、貧乏人のコミュニティーよりも、金持ちのコミュニティーの方が、遙かに強力な物である事は、明らかです。そして、最終的な到着点が、技師のメキーネスという、これまた金持ちなのですから、アンナの行方が判るまでの時間ですが、まぁ、おおよそですが、モレッティがマルコに滞在を望む、小劇場が完成する、3ヶ月後には判っていると思われます。

 そして、モレッティの提案は、ペッピーノにとっては、無茶苦茶美味しい話しであり、わざわざマルコの為に、バイアブランカまで旅をしてくれた、ペッピーノに対する恩返しという意味でも、マルコは受けるべきです。しかも、劇場専属劇団となれれば、当然バイアブランカに腰を落ち着ける事が出来、ペッピーノ、コンチエッタの夢でもある、フィオリーナとジュリエッタを学校行かせる事も可能なのです。

 こう考えれば、モレッティの提案を受け入れる事が、全ての者にとって、いい結果を生む可能性が一番高いのではないでしょうか。私が特に思うのは、メレリが塩鉱山に身を売らなくてすんだのに、という事ですかね。しかし、勿論こんな展開になってしまったら、ドラマは全く面白くないので、断ったマルコは、大正解なのは当然なのですが…

 一体お前は何が言いたいんだ、というコラムになってしまいました。誠に申し訳ありません(汗)。まぁ、たまにはこんな事もあると言う事で、ご勘弁願いたいと思います。

 最後に今回最大の名シーンですが、ちょっと捻って、マルコの食い残しを貪り食う、メレリにします。初登場のシーンとして、非常に印象深いというのもありますが、3日何も食ってないという設定が、子供心にはショックです。日本で、3日も食べていないと言うのは、結構想像を絶する事ですよね。それ以外では、妙に人懐こく、お節介やきぽい宿屋の女将の様子が、結構気に入ってます。

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