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第36話第38話

第37話『はてしない旅へ』

図1、花が違う… 今回の見所は、回想シーンの百合の花のプレゼント、ロスアルテス通り7番地、ファドバーニ邸、この3つです。

 まずは1つ目。三千里の回想シーンは少なく、あっても第19話のようなスケジュールのきつさを物語る、総集編の様な物だったりするのですが、今回は違います。ちゃんと力が入っていて、かつ味わい深い名シーンになっています。このシーンは簡単に言うと、百合の花が好きなアンナのために、ピエトロ、トニオ、マルコの3人が、3人とも百合の花を誕生日のプレゼントにした話です。メレリから貰ったアンナの手紙に、その時の思い出が書かれていて、そこから回想シーンにはいるのですが、マルコが花屋で百合の花を買うシーンで始まります。ここでの花の作画が、非常に綺麗です。花の形を非常にリアルにとらえていて、その花の絵の上手さに舌を巻きます。止め絵のセル画が数枚で、動きはなく横に流しているだけなのですが、非常に見事なシーンになっています。ただ、画面が引いて花屋全体が写ると、あれれ?、というくらい花の数が減ってしまい(図1)、あの花は一体何だったのだろうかと、頭の上のクエッションマークを消すのが難しくなります(笑)。

 百合の花を1本買い、アンナが喜ぶ顔を夢想しながらはつらつと帰るマルコですが、部屋に戻ると既にピエトロが、同じ物をプレゼントしていて、ピエトロのそれと比べ、量においてあまりに貧相な自分のプレゼントを恥じ、思わず背中に隠してしまいます。それに気づいたアンナは、息子の素晴らしいプレゼントに気付き、せっかく貰った百合の花束を、プレゼントしてくれた主に、押しつけてしまい、新しいプレゼントを貰いに行きます。

 このシーンでのアンナの演技は、まずはピエトロの花束以上に、胸一杯匂いをかいだ後、マルコに対して、キス、頬ずり左、頬ずり右の、三連続コンボという、徹底的なスキンシップ攻撃を食らわせます。ピエトロの花束と自分の一輪の差を気にしているマルコへの気遣いと、プレゼントに対する喜び、2つのアンナの心が、この演技が表現されていてます。以前にも書きましたが、演出と作画がかみ合った、高畑アニメらしい名演技といえるでしょう。

 ここでトニオが同様の品をプレゼントに持ってきますが、このシーンでのトニオの子供っぽさが印象的です。プレゼントをあげた後、アンナに抱きついているところとか、元々アンナが結構しっかりした体つきだというのもありますが、頭一つ分高いアンナの身長がそれを物語っています。ただ、子供の頃から大人びていたのが、花を渡すときの仕草と口上で分かったりもして、それもまた面白いです。

図2、美少女とペット(笑) ところで、回想シーンの後の汽車の旅のシーンで、主題歌(2番)が流れるますが、挿入歌が多く、またそれが魅力的なこの作品ですが、このようにロボット物で良くあるような、主題歌が流れるというのは非常に珍しいですね。このシーンでは、汽車の旅での時間の経過が表現されていて、マルコの席の周りで人が変わっている事から、途中駅があって人が入れ替わっていると推測されますが、バイアブランカへの馬車の旅で、駅があるような雰囲気は無かった気もしますが、実際のところはどうなのでしょう。

 次の見所、ロスアルテス通り7番地。このシーンの見所はただ1つ、美少女登場であります(笑)。前回で、フィオリーナの出番が最終回を残すだけとなってしまい、悲嘆にくれるアニオタ魂を慰めてくれる、ナイスなキャラと言えるでしょう。いかにも良いとこのお嬢様風なのが(;´Д`) ハァハァ。花に水をあげているのが(;´Д`) ハァハァ。アメリア・セバーニョスという名前も美しく、(;´Д`) アメリアタンハァハァ。キャラクターの服装や雰囲気から(図2)、某メインスタッフの趣味が色濃く出たキャラクターに見えるのは、果たして私だけでしょうか。アメデオを抱き頭をなでるアメリア演技から、その誰かさんの趣味が炸裂しているようにしか見えません(笑)。まぁそれはさておき、このシーンでは、アメリアの母親も登場し、マルコに同情を示しお金もあげようとしたりして、良い人っぷりを発揮していますが、以前にも書きましたが、どうもこの手の『金持ちの良い人』は、この作品ではインパクトが弱いように思えます。

図3、俯瞰で描かれるボカの港、渋い! さて、失意に打ちひしがれるマルコは、依然訪れたボカのポスコの店を訪れます。ボカに移動したことを示す数カットがありますが(図3)、確かにセバーニョスの家なんかも、しっかり作られているのですが、やはりボカの汚い町並みの方が、圧倒的に魅力的に描かれているのが、やはり三千里ならではだと思います。

 ここでポスコとの再会がありますが、マルコの旅の道程の面白さは、1直線ではなくブエノスアイレス→バイアブランカブエノスアイレスと、行ったり来たりをしているところにあります。当然、バイアブランカで依然あった人々との再会がありますが、この再会が非常に嬉しく感じます。これは、キャラクターの作りが非常にしっかりしているからでしょう。以前登場したキャラクターが出てくるアニメは、それなりにはありますが、再会が此処まで嬉しく、此処までの味わいが出る作品は、そうあるモノでは無いでしょう。

 さて、最後の見所、ファドバーニ登場です。ポスコは不景気を理由に、『まぁ、イタリア領事館に頼んでみるしか手はないな』と、優しそうな事を言いながらも結構素っ気ないのですが、マルコが、ボカの港の荷役作業を一手に取り仕切る有力者、ファドバーニへの紹介状を持っていると知ると、俄然やる気になります。『こうしちゃいられん』とばかりに、マルコと腕を(手ではなく腕なのがミソ)ムンズとひっつかみ(図4)、顔を覚えて貰うために必死なポスコがなかなかいかします(笑)。

図4、大張り切りのポスコ、マルコの腕を”ムンズ”と(笑) そうして、ファドバーニ邸に到着しますが、まずはそこの執事が良い。『そこの小僧入いんな』というぞんざいな台詞。ジェノバで郵便配達の手伝いの時の金持ちの家や、バイアブランカのモレッティ議員の執事とは、格段の違いを見せつけてくれます。港湾労働者を使い、砂荷役作業を取り仕切っている、泥臭い仕事の雰囲気が醸し出されています。この執事、部屋にはいるのを首で促したりもして、さらなる泥臭さを演出してくれます。

 このシーンで、マルコはマスセル・エステロンがフランチェスコ・メレリである事を、マルコは知る事になります。観客には、ファドバーニの台詞から、メレリの手紙の内容が凄く良く判ります。ありとあらゆる事全てをゲロっています。金を使い込んでいたことや、手紙を隠していたことも、全て白状しています。当然、マルコは茫然自失状態に陥ってしまいますが、そんなマルコに、ファドバーニはぞんざいな態度を取ります。これが良い。

 『私に用が無いのならさっさと返りなさい』と言いながらペンを取り、名刺にロサリオの大商人バリエントスへの紹介状を書き、マルコをロサリオに送ってあげる手はずを整えてくれます。散々きつい事を言っておきながら、しっかり面倒を見てあげる(図5)。そして『元気を出せジェノバっ子』と、力強く励ますのがこれまた良い(・∀・)。これぞオヤジアニメ三千里、と思わずにはいられませんね。このファドバーニは、私が三千里の中でも、非常に好きなキャラクターの一人です。このシーンでは、紹介状を渡そうとするがショックで受け取れないマルコを見て、ポスコに受け取るよう目配せをファドバーニがして、それにポスコが応える演技も非常に魅力的ですね。。

図5、ポスコの言葉に『やかましい、そんな事くらい判っておると』一喝 さて、今回最大の名シーンですが、やはりファドバーニ邸でのやりとりにつきるでしょうね。ファドバーニのキャラクターとしての魅力が非常に光っていました。ところで、ファドバーニ邸を去った後、演技の端々に、メレリへの怒りがにじみ出るマルコもまた良い味を出していましたね。

©NIPPON ANIMATION CO.,LTD. 1976

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